12月10日(水曜)午後、今治西高校2年生を対象にした地域探究の授業ZESTが開催されました。外部講師が登壇し、アドバイスをする機会は年間4回あり、この日は最終回となりました。本学からは、今治市総合戦略推進会議の会長を務める大成経凡先生がグローカル講座のアドバイザーに招かれ、4人×5班のプレゼン発表に対し、講評と助言を行いました。50分×2コマの中で各班の発表に耳を傾けるのですが、次年度から国際科コースが新設される同校では、ローカルなテーマをグローバルな視点でとらえる思考力が求められています。
生徒たちが選んだテーマは、1班「世界にしまなみ海道の魅力を伝えるには」・2班「多文化共生でより良い今治市にしよう」・3班「今治と世界を結ぶwith今治タオル」・4班「今治の姉妹都市〝パナマ〟を知る旅に出よう!」・5班「今治の食を世界に!!」というものでした。どの班も、前回の助言からブラッシュアップされていて、成長を感じることができました。今治市では、このほど「イマバリ未来デザインアワード」という若い世代のアイデアを表彰するアワードを新設し、優秀なアイデアは来年度以降に事業化に向けて取り組むことを発表しました。つまりは、5つの班にも応募の資格があり(2月6日〆切)、探究によって得られた提案が現実のものとなるチャンスが生まれたのです。同アワードの審査員を務める大成先生からは、校内ポスターセッションで講座を終了とせず、その先の今治の未来を見すえて精度を高めて欲しい旨を生徒たちには伝えました。
1班の発表については、しまなみ海道にやってくる外国人たちにインタビューをし、その結果を分析する中で考察を深めていく姿勢が良かったです。最初はサンライズ糸山でインタビューを試みましたが、サンプルが少ないことでJR今治駅前に場所を移す軌道修正も良かったと思います。しまなみ海道にやって来る外国人は白人系が多く、サイクリングを目的とし、軽装備のためお土産はあまり買わず、滞在しても1泊程度で経済効果には結びつかないことが改めて分かりました。これを改善するためには2泊以上できるサイクリングイベントの仕掛けが必要との考察にいたりましたが、その中身をどのようにするのかまで提案できればさらに良かったと感じました。
2班は本学へ2回もヒアリング調査にやって来て、アジア系の留学生たちを通じて今治市に住む外国人にとっての住みやすさを考察してくれました。日本人と外国人との交流会の機会を増やすことを提案していましたが、具体的にどのような交流会がいいのか、知恵をしぼって欲しいと願います。やさしい日本語の必要性を感じてくれたのが良かったと思いました。
3班は、前回までは硬水・軟水の理由で今治タオルが世界に広く流通しないというアプローチで攻めていましたが、イケウチオーガニックの池内計司代表にインタビューを実施したことで、どうもそれだけの理由ではないらしいという袋小路に迷い込みました。自社の製品にプライドを持ち、自社努力で海外にうって出るくらいの挑戦が必要という、既存の同業者組合や行政の補助金などに頼らない新たな視点に気づけたようです。現在の今治のタオル業界で起きている問題については、改めて大成先生から解説がありました。コロナ禍以降、冠婚葬祭などのライフスタイルが大きく変わり、タオル需要が減少したようです。そういう時に苦境に陥るのが、旧型織機しかなく、しかも後継者のいないタオル会社となります。今年だけも数社が廃業に陥ったようで、今治タオルの生産量が今後増える見通しが立てられないのが現状のようのです。それを知って生徒たちがどう今後の展望につなげるのか、最終案を楽しみにしたいと思います。
4班については、パナマ海事庁にインタビューし、資料も収集する中で、姉妹都市のパナマシティを知ってもらうため、自分たちがパンフレットを作るという提案にいたりました。実際にサンプルを作っていました。これは、前述のアワードに該当する案件となります。今治市の姉妹都市が国内外に4つあっても、市民の認知度は低く、大成先生が監修する「いまばり博士検定」の受験者ならよく理解できている程度か。パンフレットを作成するという発想は、高校生だからこそ生まれたものかも知れません。
5班については、しまなみ海道・今治市に観光でやってきた外国人の多くがサイクリング目的の中、来た人に満足してもらうため今治のご当地グルメを提案するというものでした。色々と試した結果、「せんざんきと大葉のおにぎり」「瀬戸内レモンとリンゴの味噌おにぎり」にいたったようです。他班からの質問で、「お味はどうか?」という感想を訊かれていましたが、第三者のモニターの感想も発表データに添えると、説得力が増すように感じました。やるからには、それらをどこで販売・提供するのかのビジョンを示すといいかも知れません。せとうちみなとマルシェや学校の文化祭など、せっかくなので実現に向けて動いて欲しいと感じました。
以上が、大成先生の講評ですが、生徒たちには再検討・修正する時間がまだ少し残されているようです。考えて、考えて、考え抜いて、結果としてグローカルな視座を身につけてもらいたいと思います。重ねた努力は無駄にはなりません。来春新設される本学の地域未来創生コースでも、地域探究を深める中で、グローカルな視座が学生に身につくよう指導して参りたいと思います。






















