6月11日、今治西高校2年生のZEST「グローカル講座」で、本学地域連携センター長の大成経凡先生が出張講義の講師を務めました。グローカルとは、「グローバル」×「ローカル」の造語で、身近な地域の素材を使って国際的な視座を培うというものです。わざわざ海外旅行をしなくても、世界を知ることができるのです。今治の中に世界があり、今治を学びのフィールドとすることで、世界を知ることができます。来年度、本学で開設予定の地域未来創生コースが、まさにそうした視点に立った人財育成を目指そうとしています。
前回のZESTは4月23日にありました。5つの班(4人×5)のテーマ設定に対して、大成先生は意見や助言を述べました。その後、各班はテーマや中身を修正・進化させ、今回は今後の研究の進め方について発表しました。各班のテーマは以下の通りです。
1班「今治サイクリングの未来」
2班「多文化共生でよりよい今治市にしよう」
3班「今治と世界を紡ぐwith今治タオル」
4班「今治の姉妹都市パナマを知る旅に出よう」
5班「今治の食を世界に」
パワポのスライドを使って各班は発表しましたが、まだ材料不足・調査不足もあって、抽象的な事柄の説明が多かったように思います。例えば、しまなみ海道とサイクリングについて紹介するのであれば、しまなみ海道がどのエリアを指すのかという地理的な解説が必要です。パナマについても同様で、発表する自分たちは所在地を分かっていても、聴き手がどこにあるのか分からなければ、理解度は低いものとなります。パナマは中南米の国で、パナマといえば何と言ってもパナマ運河でしょう。聴き手の立場になった表現方法について、もう少し工夫するよう大成先生は促していました。
また、パナマの首都パナマシティがどうして今治市の姉妹都市になったのかは、今治船主の便宜置籍船(べんぎちせきせん)という、ビジネス上の理由が背景にあることも大成先生は解説しました。今治船主の特徴は、外国航路を運航する外航船主が多いことです。しかし、それらの多くの船籍は日本にあらず。これは、日本よりもパナマやシンガポールに船籍を置いた方が、格段に税金が安いという利点があるからです。いわゆる〝TAX HAVEN(タックス・ヘイブン)〟です。パナマでは、外航船主に対して税制優遇措置をとることで税収の確保を図っており、それが国の振興につながっているのです。今治船主の船にはパナマ船籍が多く、これに配慮してパナマ海事庁の事務所が今治市内に開設されています。今後は、そういう材料集めに努めるよう、生徒たちにアドバイスしていました
3班の内容には、大成先生も特に関心を示していました。高品質の今治タオルですが、国内でこそ無双の存在感を放つも、世界シェアではどうでしょう。そもそもタオルに世界シェアはあるのか? そんな問答で発表者に詰め寄ります。この班の良かった点は、硬水・軟水の問題に着目し、硬水の地域で今治タオルは売れないのでは?という仮説を立てたことです。では、どうすれば海外の販路開拓につながるのか。そこには、地場産業の振興に貢献したいという高校生なりの愛郷心が感じられました。業界がその問題にどう対処しているのかを知るだけでも、探究の成果としてとらえることができます。
今後どの班も、アンケートやヒアリングを計画中で、夏休み期間中にそうした動きが出てくるものと思われます。学業と部活の合間で大変だとは思いますが、準備過程で大成先生は問い合わせに応じるようです。グローカル班の20名のみなさん、頑張ってください。