今回の授業レポートは前回に続き2年生で学ぶ『障害の理解Ⅰ』です。
『障害の理解Ⅰ』は障がいのある方の心理や身体機能に関する基礎的知識を学び、障がいのある方の生活を理解する科目です。
今回はゲスト講師に、今治難聴者協会 代表の渡部優子さんにお越しいただき、サポーターとしてお越しの渡部さんと共に「聞こえの授業」をしていただきました。(今回はサポータも同じ渡部さんでしたので、渡部優子さんを親しみを込めて、優子さんと表記させていただきます。)
優子さんは2歳の時に失聴し、その後ご両親から教えられて言葉を習得され、以降、長い間口話でコミュニケーションをとりながら、今は聴導犬のシェリーと共に生活されているそうです。聴覚障がいのある方とのコミュニケーションをとる方法というと、手話が思い浮かぶ方も多いと思います。優子さんによると、手話は子供の頃から学んでいる人にとっては有効ですが、中途失聴者や難聴者にとっては、手話より口話でのコミュニケーション、また、要約筆記で情報を伝えてもらうことの方が多いそうですよ。手話だとお互いに勉強していないと会話を楽しむことはできませんが、口話ならすぐにでもコミュニケーションを取ることができそうですよね。
そして今回は、可愛いゲスト、トイプードルのシェリーも一緒に来ていただきましたよ。可愛いシェリーですが、実はとっても賢い犬なんです。盲導犬が視覚障がい者の目であるように、聴導犬は、聴覚障がい者の耳。シェリーは優子さんに「音」を知らせる聴導犬です。携帯電話の着信や玄関のチャイム、目覚まし時計やキッチンタイマーの音を優子さんの体にタッチして知らせてくれるそうです。他にも、後ろから来た自転車のベルの音を聞いて道路の端に誘導したり、火災報知器などが鳴る非常時には、床に伏せて知らせることもできるんだそうです。
まず、優子さんのお話を聞かせていただきました。
子供の頃の辛かった経験や現在の生活、美容師の免許を取ったときのお話やその仕事について、また、育児の際に困った経験などを様々なことをお話してくださいました。最初は原稿が写し出されるモニターばかりを見ていた学生たちですが、渡部さんから「時々、原稿を確認しないで耳だけで聞いてみてください」と声をかけられ、優子さんの言葉に熱心に耳を傾けます。
続いて、伝言ゲーム形式での口話体験や補聴器をつける体験です。
口話体験では、唇の動きだけでなく、思わずジェスチャーの方ばかりに力が入ってしまう学生もいて、笑いに包まれるひと幕もありました。一方、補聴器の装着体験では、見たことはあっても実際に耳につけることはみんな初めてで、恐る恐るといった風でしたが、思った以上に声や周りの音が大きく聞こえてびっくりしたり、想像以上に不快な音が聞こえることもわかり、貴重な体験になりました。
休憩を挟んで次は、車いす利用者への着物や浴衣の着付け体験です。
優子さんは、現役の美容師としてだけでなく、福祉美容師としてもご活躍なんですよ。優子さんチームのと学生チームに分かれ、着付け対決!だったのですが…実際には優子さんの手も借りながらの着付け体験となりました。
口話に少し慣れてきた最後は、優子さんの話す短い文章を目と耳で聞いて文字にしたり、数名の学生が口話と筆談で優子さんとの会話を楽しませていただきました。また、渡部さんからは要約筆記の必要性についてもお話していただきました。要約筆記とは、聴覚障害のある方への情報伝達手段のひとつで、話されている内容を要約して文字として伝えることです。
渡部さんが話すことを問題に、テスト形式で要約筆記の実践してみたり、約3時間の中で様々な体験をさせていただきました。
口話や要約筆記、今回初めて耳にした学生も多かったようですが、優子さん、渡部さんのお話、そして優子さんとの出会いは、間もなく学外での実習を控えた2年生にとって、とても実りある時間になりました。学生からは「聞こえの授業」をまさか難聴者本人である優子さんの言葉でしてくださると思っておらず、とても驚いたけれど貴重な体験ができて良かった、などの声が聞かれました。
優子さんは、口話や要約筆記は「心で伝え、心で書き、心で読む。心で通じ合っている言葉」であることを多くの人に知ってもらいたいと仰っていました。優子さんから直接お話を聞いたのだから、これからはその使命を、めいたん☆かいごふくしの学生たちも担っていかなければなりませんね♪
優子さん、渡部さん、それからシェリーちゃん、内容盛りだくさんな「聞こえの授業」をありがとうございました。