2024年3月25日月曜日

大学公開講座 愛媛県神道青年会による慰問神楽(3月22日)

 3月22日(金曜)午後、愛媛県神道青年会様をお招きし、雅楽演奏・浦安の舞・伊豫神楽をまじえた「令和5年度 慰問神楽」を開催したところ、83名の来場者がありました。当日は、今年度最後の大学公開講座となりましたが、なかなかお目にかかれない雅楽の公演ということもあり、松山市や高知県からも来場者がありました。




 愛媛県神道青年会は、愛媛県内の40歳以下の神職で構成される組織で、雅楽の演奏者は10名ほどいました。今治市内では吹揚神社の田窪禰宜、綱敷天満神社の菅宮司が参加し、司会は伊佐爾波神社の野口禰宜が務めました。


 雅楽は、わが国の古代にルーツをもつ〝世界最古のオーケストラ〟として、NHK大河ドラマ「光る君へ」でも紹介されて話題となりました。ご年輩の来場者に感想を訊くと、若い頃に聴いた印象と、今とでは印象がずいぶん違ったようで、心に染み入る音色に満足された様子でした。洋楽に慣れた生活を送っていると、日本の先人たちが培ってきた和楽器の音色から遠ざかってしまいます。当日は、各楽器の紹介もあり、それぞれがどんな音色をだすのか、新鮮な学びを得たような喜びを感じました。笙(しょう)・篳篥(ひちりき)・龍笛(りゅうてき)・鞨鼓(かっこ)・楽太鼓(がくだいこ)・鉦鼓(しょうこ)など。例えば、雅楽を代表する楽器の笙は、その形が羽を休めている鳳凰に似ていることから鳳笙(ほうしょう)とも称されます。吹いても吸っても音が出せるようで、小さなパイプオルガンのような印象が強く残りました。笙はリードが湿りやすいため、演奏前に電熱器でくるくる回しながら暖めていましたが、これは良い音色をだすための工夫のようです。また、鞨鼓・楽太鼓・鉦鼓が音を合せることが〝打ち合わせ〟の語源になっているようです。


鳳笙を暖める光景

 さて、雅楽演奏は、多くの参加者が神社や式場で聴いたことのある平調音取(ひょうじょうのねとり)の「越殿楽」(えてんらく)や「五常楽急」(ごじょうらくのきゅう)などの曲目をご披露いただきました。平調は雅楽の調子の一つで、音取は雅楽の序奏を意味します。個々の曲の意味や歴史背景についても解説いただき、単に聴くだけでなく、教養を深めることができました。例えば〝五常楽〟は、古代中国の唐の皇帝・太宗が作ったとされ、曲名には人が守るべき道徳の仁・義・礼・知・信の〝五常〟を宮・商・角・微・羽の五つの音に配しているともされます。つづいて、西条市の石鎚神社の巫女による「浦安の舞」は、観客席をご神殿の位置に見立てて、いつもとは違った視点から鑑賞することができました。男性神職の力強い歌声と和楽器の雅な音色をBGMに、舞は神々しく感じられました。このほど本学を卒業した学生1名が、4月から大三島の大山祇神社に巫女として就職することが決まっており、その彼女も勉強をかねて鑑賞していました。

浦安の舞

浦安の舞


 浦安の舞でうっとりした後は、男性神職がダイナミックに舞う「伊豫神楽」へと演目が移ります。この神楽は宇和島市及び北宇和郡一帯の各神社の春祭りで舞われるもので、男神子(おかんこ)神楽とも呼ばれているようです。今治地方の方には馴染みの薄い芸能となりますが(大三島大見地区に大見神楽がある)、「伊豫神楽かんなぎ会」が保護団体となって、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。舞う際の太鼓の調子がアップテンポで力強く、現代音楽に通じるものを感じさせました。この日は「十番 式三番舞の口明之事」「二十五番 神体鈿女之神楽舞之事」「三十四番 妙剣之舞之事」をご披露いただきました。


伊豫神楽

伊豫神楽

伊豫神楽

 最後は、楽器体験の時間を25分ほどいただきました。来場者は、気になる楽器のもとへ駆け寄り、青年会メンバーから楽器の操作の仕方を学んでいました。一つの楽器にとどまらず、複数の楽器に触れ、演奏を楽しむ来場者もいました。巫女さんとの記念撮影に興じる参加者もいましたが、扇が意外に重いことに驚いた参加者もいました。雅楽そのものを生涯学習として楽しみたい方は、今治市内では吹揚神社で定期的に講習の場を設けているそうです。

楽器体験(楽太鼓)

楽器体験

 今年度は14回の大学公開講座を開催しましたが、次年度も同じくらいの回数、地域みなさまのニーズを汲み取りながら、生涯学習の助けとなる機会を設けて参りたいと思います。引き続き、どうかよろしくお願い申し上げます。


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