2024年2月21日水曜日

公開講座 2月17日 「地域から考えるしまなみ海道の観光とポテンシャル」

 2月17日(土曜)、「地域から考えるしまなみ海道の観光とポテンシャル」と題して、株式会社しまなみの経営イノベーション企画部長の蓮岡悠介氏を招き、しまなみ海道の地域観光を切り口にご講演をいただきました(25名受講)。株式会社しまなみは、大三島・伯方島・大島にある3つの道の駅を運営管理する観光会社で、大島の下田水港・よしうみいきいき館を発着する同社の急流観潮船は、しまなみ海道人気の観光商品として知られています。同社は本学と連携協定を結んでおり、卒業生の就職や学外授業の受け入れ先として大変お世話になっております。また昨年からは、オープンキャンパスの今治魅力発見ツアーでも、急流観潮船を利用させていただいているところです。


講演の様子①


 蓮岡氏は、瀬戸大橋の本州側の玄関口・倉敷市児島(1978年生まれ)の出身です。大学卒業後は、東京の大手観光会社(H.I.S)に勤務し、ドイツの海外勤務も経験しています。訪ねた国は約40か国あるそうですが、しまなみ海道の景観に似た場所はどこにもなく、今治市に昨年移住してきてその魅力にとりつかれているとか。株式会社しまなみで働くようになったのは昨年9月からですが、大学院で観光社会学を専攻していた経験から、しまなみ海道の観光業の現況と課題、今後の可能性について報告してくださいました。

蓮岡氏

 今治市のホームページには、今治市は造船・タオルなどの工業都市として発展してきたが、しまなみ海道の開通によって、今後は風光明媚な景観や村上海賊の歴史遺産などを活用し、観光都市としての期待が高まると記されています。近年は、サイクリストの聖地として話題で、亀老山展望台も日本屈指の展望所として認知されつつあります。各種統計データによると、観光客はコロナ禍で一時減少は見られましたが、現在は回復の傾向が見られ、日本全体としてもインバウントは今後伸びていくと予想されています。しまなみ海道を訪れた観光客(日本人)に訪問理由をアンケートしたところ、ドライブやサイクリングなど、経済効果の少ない通過型の項目が上位を占め、キャンプ・釣り・潮流体験などの体験型が少ないという傾向が分かりました。

急流体験(昨年3月のオープンキャンパス)


 今後は、その体験型の利用者が増えるしくみづくりが必要で、発地(はっち)型から着地型への旅行商品への転換が必要となってきます。発地型の商品は、まとまった数の旅行客を都市部で集めて地方の観光地へ送り届けるメリットがあります。一方、昨今のホンモノ志向の小ロットの旅行形態に、それが対応できなくなっているというデメリットが紹介されました。観光客は増えたが、ゴミ問題や交通混雑など、日常生活に支障が生じるオーバーツーリズムの弊害も指摘されています。沖縄の石垣島や竹富島などは、大手旅行会社が利益を吸い上げ、地元への経済効果が少ないという弊害も紹介されました。今治市大島でも、サイクリストの交通マナーや観光マナーにいい感情をもたない住民もいて、日常と非日常の境界線が崩れるケースが報告されました。

 観光市場は日常生活の中に存在しているため、その生かし方によっては地域活性化にも大きく貢献するとのことでした。着地型観光への移行をはかる中で大切なことは、まず地域住民が〝地域を知る〟ことです。そして、〝地域から考える〟という力が大切になってくるとのことでした。近年は、〝まち歩き〟など身近な場所に光を当てる旅「マイクロツーリズム」が注目を集めています。株式会社しまなみでも、来島海峡大橋の登頂体験ツアーを本州四国連絡高速道路株式会社とタイアップして取り組んだり、ガイド研修を積極的に推し進めたりと、時代のニーズに合わせた着地型観光に力を入れ始めたところです。最後に、インバウンド向けに同社が制作したしまなみ海道の観光動画を鑑賞しましたが、文字スーパーがなくとも、BGMと映像だけで十分にしまなみ海道は魅力が伝わってきました。今では、〝SHIMANAMI KAIDO〟が海外でも固有名詞として普及するほど、その知名度は世界に広がりつつあるとのことでした。




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