2024年8月30日金曜日

東予地域における農業者の「環」プロジェクト交流会に参加

農林水産省中国四国農政局愛媛県拠点(松山市)では、令和4年度から同6年度までの間に『東予地域における農業者の「環」プロジェクト』と題し、地域で活躍している農業者との意見交換を定期的に行って参りました。その東予地区での第1回交流会が、平成5年2月に本学で開催されたご縁で、今回の交流会に本学からは地域連携センター長の大成経凡先生と調理ビジネスコース2年の大仁田佑紀さんがオブザーバーとして参加することになりました。

意見交換の様子

8月27日(火曜)午後、西条市総合福祉センター研修室で開催され、今治市からは和牛の肥育農家の新開俊之氏、花き栽培農家の曽我部昌紀氏(そがべ花園)の出席がありました。両氏とは第1回交流会で知遇を得、授業で職場訪問(写真添付)をさせていただくことがかない、貴重な機会を設けていただいた愛媛県拠点様には感謝いたしております。今回の交流会には、今治市以外でニンニクなど野菜栽培を中心とする株式会社四国クオリティの眞鍋一慶氏、米麦以外に七草粥の葉わさびの生産農家・アグフィールド株式会社の伊藤大起氏、米麦を中心に野菜栽培を手がける徳永農園の徳永大宣氏、アスパラガス・ブロッコリーなどの野菜を中心とするFRUITS WALKの豊田果歩氏の出席がありました。何人かは台風10号の接近に備えて急きょ欠席となり、改めて自然に左右される業種であることを実感したしだいです。

そんな中、初対面となる四国中央市の眞鍋氏、西条市の伊藤氏・徳永氏・豊田氏からの体験談を聞けたことは、とても新鮮で刺激的でした。本学では、西条市でニンニク・枝豆・スイートコーンの栽培を手がける脱サラ農家のピークファーム・坂下夫妻との親交があり、ニンニクの種植え・収獲作業に毎年学生たちがアルバイトで参加しているところです(写真添付)。この日参加した大仁田さんもその一人で、住環境の違う地域の農家の取り組みから新たな知見が得られたことでしょう。特に大仁田さんは、将来、飲食店の起業を考えていることもあって、今後の自身の活動に向けて財産になったことと思います。


新開さんの牛舎を見学(2023年10月)



ニンニク収穫の農業アルバイト(2023年5月)

この日の議事としましては、まず愛媛県拠点の職員から、農産物の環境負荷低減の「見える化」について説明がありました。これは、農業活動からも地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出がある点を踏まえ、その対策に努めている農家を消費者目線からも評価しようという農水省の取り組みとなります。オタマジャクシなどの生態系への配慮も、評価の対象になっていました。地域によって積極的なところとそうでないところがあるようですが、本県は導入に低調とのことでした。

つづいて、八幡浜市の真穴みかん関連商品のECサイトなどを手がける株式会社ナナサンの仙波秀喜代表から、「ウェブサイト・SNSの運用と成果の生まれる活用」について基調講演がありました。農家の多くが、自社の商品売上げ向上のため、ウェブサイトやSNSの必要性を認識しながらも、導入に踏み切れていない現状があるようです。ウェブサイトにはコーポレートサイト・ECサイト・ブランドサイト・サービスサイト・求人サイト・ランディングページなどの種類があり、SNSにもX(旧ツイッター)・Instagram・Facebook・YouTube・LINE・TikTokなどの種類があります。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、それを自社や商品の特徴に合わせて駆使することが大切とのことでした。

その後の意見交換会では、出席した農家の取り組みや政府への要望など、消費者があまり感じとることができない愛媛の農業の課題や農家の企業努力を知ることができました。例えば、今夏の酷暑が農家に与える高温障害では、牛にしても花にしても影響は見られるようです。新開氏は、扇風機や発汗作用の餌などで対応しているが、スプリンクラー・ミストなどの導入も考えなくてはいけないとのことでした。曽我部氏はスプリンクラーの増設などを考えており、それが商品の値上げにも影響してくるが、卸業者者や消費者との信頼関係でこれまでも乗り切ってきたと自信をのぞかせていました。いま、農業の現場では、合理的な価格形成(商品の適正価格)で、農家が意欲的に事業経営できる未来像を追求しているところです。

新開氏にとっては、高温障害よりも飼料用の稲わら確保が課題のようで、事業拡大の中で今治市内の農家だけでは足りなくなってきていて、早速、西条市の徳永氏に相談を持ちかけていました。この日出席した農家の皆さんは、愛媛の未来の農業を牽引していく方々で、互いの課題を共有し、補完し合える関係性がとても大事だと感じました。また、そういう場を提供し、現場の意見に耳を傾けて政策に反映しようとする愛媛県拠点の取り組みも大切だと感じました。

 大仁田さんからは、昨年度、JAおちいまばりとのコラボで実現した里芋の親芋を使ったレシピ考案の活動報告がありました。そして、親芋のように廃棄処分する農作物を提供いただければ、新たな商品に再生したいとアピールしていました。これに対し豊田氏からは、アスパラガスの廃棄部分を乾燥して粉末にし、お茶にする取り組みを行ったという事例報告がありました。

意見を発表する大仁田さん(右手前)

大成先生からは、自身が所属するNPO法人「能島の里」で、耕作放棄地をクロイチジクの農園に替え、収穫後にジャムにして販売している事例報告がありました(写真添付)。また、農業の法人化が議題にあがったことで、本学のネパール人留学生たちの就職先として、農業法人の可能性はいかがなものか、愛媛県拠点様へ要望を行ったしだいです。10月以降の後期授業では「地域交流演習」で新開氏の牛舎見学や能島の里のクロイチジク収穫体験を予定しており、10月にはピークファームでのニンニク種植えバイトが予定されております。愛媛の農業の現状を知り、課題を知る中で未来を創生できる人財育成に励んで参りたいと思います。


今治市宮窪町でクロイチジク狩り(2023年10月)


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