2023年5月10日水曜日

授業紹介「地域活性化論」の学外授業

 4月27日 「地域活性化論」の学外授業

 これまで、何度も官民協同で活性化事業の展開が見られた今治市玉川町鈍川(にぶかわ)の「鈍川温泉郷」ですが、しまなみ海道開通の1999年こそ特需に沸くも、その後は施設の老朽化や競争力低下もあいまって、宿泊客の低迷がつづいております。しかし、湯の泉質は〝伊予三湯〟や〝美人の湯〟のキャッチコピーが物語るように、全国名湯にひけをとりません。周辺の自然環境や観光スポットとのリンクで、浮上のきっかけがあるはずです。


鈍川温泉の身近なルーツは、明治初年の今治藩主・久松定法が湯治目的で開設した楠窪(くすくぼ)冷泉浴場にさかのぼります(今も冷泉をボイラーで温めて使用)。しかし、廃藩置県で知藩事の定法が今治を去ると、その後は賑わいを失いました。復活するのは大正14(1925)年9月18日のことで、鈍川村有志が地域振興で〝鈍川温泉〟を開場させたのです…。そんな事前学習をへて、学生たちは鈍川温泉組合所属の4つの温浴施設・旅館をハシゴリレーで見学することになりました。20名の学生が参加し、そのうち10名は中国人留学生でした。


 まず、公営浴場として市民利用客の多い「鈍川せせらぎ交流館」を訪問。こちらは、日帰り入浴とお食事処の経営が主で、宿泊施設ではありません。現在、指定管理の「ありがとうサービスグループ」のもと、懐かしの駄菓子コーナーや珍しいメダカの鑑賞室を設けるなどして、お子様連れの入浴客が喜ぶ仕掛けを行っております(屋外のサウナテントもあり)。同グループは、鈍川温泉郷最大の施設であった旧鈍川温泉ホテル(現在、休業中)の施設を購入し、今後、時間をかけて同所をリニューアルし、温泉郷全体の活性化に寄与していくとのことです。


鈍川めだか水族館(せせらぎ交流館)


 次に、香港・台湾などのインバウンド利用客が多い宿泊施設「美賀登」(みかど)へ。菅波社長夫妻から中国語と日本語で歓迎のあいさつを受け、個室・宴会場・大浴場など、施設をひと通り見学させていただきました。いずれも、窓から鈍川渓谷の美観が目に飛び込み、各所に生け花などを供えておもてなしの工夫が見られました。菅波社長によると、「この施設が出来た当時は、今治で一番高い7階建ての建物だったんですよ」とのことで、1階のフロントから川床に向かって建物が地下にのびる、渓谷を生かした設計となっています。サプライズは、インターンで来日して同所で働くベトナム人女性2人で、とても愛嬌があって、一生懸命働いている姿が印象的でした。


美賀登の和室

美賀登館内の風流

渓谷沿いに立地する美賀登の大浴場


 3施設目はカドヤ別荘へ。ちょうどこの日は定休日でしたが、快くご対応下さり、個室・宴会場・大浴場を見学させていただきました。大浴場は、車いす客でも廊下から脱衣所へ入室しやすいよう、段差をなくすリフォームがされていました。また、〝温泉むすめ〟や〝eスポーツの合宿所〟など、新たな取り組みをこれまで仕掛けてきたことに感心しました。温泉むすめとは、全国の温泉産地をキュートな女性で擬人キャラ化したもので、せせらぎ交流館には鈍川温泉むすめのボードが設置されていました。eスポーツは、オンラインゲームやビデオゲームでの対戦をスポーツの競技としてとらえたもので、大会によっては億単位の高額賞金が設定されるものもあるとか。その実証実験を、過去に同所において合宿形式で開催したところ、参加者にとても好評だったようです。

カドヤ別荘の大浴場
 

鈍川温泉の擬人キャラ〝温泉むすめ〟(せせらぎ交流館

 4施設目は皆楽荘へ。こちらは、新来島どっくグループが経営する宿泊所となり、個室・宴会場・大浴場をひと通り見学させていただきました。コロナ禍の間に、バリアフリーの改修を済ませていて、清潔感のある会議室もありました。そして同所も、各部屋から渓谷美を楽しむことができ、絵画やソファなどのインテリアにも力を入れているようでした。最後は、中川社長からのアドバイスで、同所より少し上流にある逆アーチ橋の「湯の花橋」周辺を散策。まさにインスタ映えするスポットで、はしゃぐ学生たちの姿が印象的でした。要所で雑木の伐採を行うなど環境整備を行えば、森林浴を兼ねて散策してみようという気分に駆り立てられるでしょう。

皆楽荘のバス・トイレ(バリアフリー対応)

皆楽荘の懇談室

鈍川渓谷を散策

 次回の授業では、この日の振り返りを行い、学生たちが何を感じたのかを検証し、鈍川温泉郷の活性化のヒントを探りたいと思います。


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