2025年10月3日金曜日

智内兄助一般財団法人と連携協定締結(9月19日)

9月19日(金)午後、本学本館大会議室において、本学と智内兄助一般財団法人との間で「教育・人材育成の推進及び地域活性化」を目的とした連携協定の締結式が行われました。同財団理事長の智内兄助氏(以下、智内画伯)といえば、パリの個展を中心に国内外で活躍する世界的な洋画家です。ヨーロッパ屈指の美術コレクター・ロスチャイルド家の蒐集作品にも智内作品が加わり、近年は日本の花鳥風月を画題とする作品が多く、ツルやクジャクの絵に新境地を感じるところです。現在は自宅近くの埼玉県蕨市にアトリエを構え、絵画活動に励まれております(画廊「ギャルリーためなが」とアーティスト契約)。

少し智内画伯の略歴を紹介しますと、ご出身は今治市波方町波方で、1948(昭和23)年のお生まれ。市内の波方小・北郷中学・今治西高校をご卒業し、東京芸術大学大学院を修了されています。今治西高校では、郷土の美術界を牽引していた美術教師・高階重紀氏との出会いがあり、氏が顧問を務める美術部で才能が磨かれました。1980年代初めから、和紙にアクリル絵画という独特な描法で、日本画と洋画の境界を越えた革新的な絵画表現を創り上げました。今治市民の間では、〝童女を描く、暗くて怖いイメージの画風〟が今でも強く印象に残っているようですが、その童女は愛娘の久美子さんを描いており、久美子さんの成長とともに優しい絵に変化していったように思います。

1987年には第30回安井賞展で人気投票による特別賞、1991年には第33回安井賞展で佳作賞を受賞するなど、業界における地位を高めていきます。この安井賞は、新人洋画家の登竜門とされ、画壇の芥川賞とも称されています。智内画伯の人気に火が付いたのが、1992年3月から毎日新聞朝刊に連載された宮尾登美子の小説「蔵」の挿絵画を手がけるようになってからです。この小説は翌年4月まで連載がつづく長編小説となりましたが、画伯にとっては1年ほどかけて実力を世に示す発表の場にもなったようです。1999年には、しまなみ海道開通を記念し、今治市主催の記念イベントの一つとして「ちないきょうすけが智内兄助になるまで」展が今治国際ホテルで開催されました。成長した姿を故郷の人々に知ってもらう好機となり、その後も県内では久万美術館や県美術館で特別展を開催し、坊っちゃん劇場のミュージカル「鶴姫伝説」「誓いのコイン」「新鶴姫伝説」のポスター原画を描くなど、故郷への地域振興にもひと役買ってきました。

今年で喜寿を迎えた智内画伯ですが、精力的にパリの個展に向けた作品づくりに励む一方、蕨市の文化活動を通じた地域振興にも尽力し、今後の活動を視野に昨年財団を設立。今年5月には今治市との間でも文化・芸術の振興や地域活性化などを目的に連携協定が結ばれています。同財団の連携協定締結は本学が2番目ということになり、幼児教育学科や新コース「地域未来創生」との連携が想定され、海岸漂着の流木などを使って三輪車を子どもたちと一緒に作ってみたいという抱負も語られていました。智内画伯は、中学・高校の同級生で世界的ジャズトランぺッターの近藤等則氏(故人)とのコラボで、絵本『ぼくがうまれた音』(福音館書店、2007)の中で、文を近藤氏・絵を画伯が手がけたこともあります。今回の帰郷は、翌日に河野美術館で開展をひかえた「第77回市展」に合わせたものでしたが、展示作品の中で、障がいをもった子どもたちが描く作品を高く評価されていました。

さて、締結の調停式に本学からは泉学長、井上幼児教育学科長、幼児教育学科教員、地域連携センター職員が出席し、智内兄助財団からは理事長の智内画伯とご長女で理事の智内久美子氏が出席されました。この日は欠席となりましたが、ご長男で理事の〝左手のピアニスト〟として活躍する智内威雄氏については、すでに本学の公開講座に3回ご登壇されています。調印式終了後は、本学めいたんプロモーションクルーの学生がパーソナリティを務めるFMラヂオバリバリの番組「めいたんへ行こう!」の収録があり、絵を描くのが大好きな森美友さん(幼児教育学科2年生)が画伯にインタビューをしました。また、森さんがデザインした「めいたん学生祭2025」のチラシについても講評をいただき、とてもいい想い出となったようです。インタビューの模様は5分番組ではおさまりきらないため、改めてアーカイブの30分作品に収録してYouTube動画で配信するなどしたいと思います。そこには、画伯の青春時代の想い出や故郷への熱い想いが込められ、その人柄を知るうえで貴重な肉声に触れることができます。ちなみ、同席した幼児教育学科の吉井ゆだね先生は、「蔵」の挿絵画時代から家族で智内画伯のファンだそうです。それまで購読していた某地方紙を辞めて、1年ほどは毎日新聞を購読していたというエピソードをカミングアウトしてくれました。何度も何度も智内作品を模写したようで、「当時モデルであった久美子さんを一番模写したのは私です!」とのことでした。

今後は、本学の授業や課外活動の中で、智内画伯や智内威雄氏との交流機会が増えてこようかと思います。学生の成長につながる仕掛けや地域貢献につながる活動を展開して参りたいと思います。


署名の様子

泉学長と智内画伯(右)

智内画伯から講評を受ける森さん

会話が弾む吉井先生


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