10月15日(水曜)14:25〜16:25に県立今治西高校で開催された地域探究の授業ZESTで、本学地域連携センター長の大成経凡先生が出張講義を行いました。同授業は、次年度からの同校国際科コース開設をにらんだ2年生の科目です。大成先生はグローカル講座の20名の生徒を担当し、5班に分かれたプレゼン発表の助言や講評を定期的に行っています。
この日は3回目のプレゼン発表となり、各班とも夏休み期間などを利用してアンケート調査やヒアリング調査を実施し、精度が前回よりも上がっていたように思います。2班の「多文化共生でより良い今治市にしよう」は、実際に本学に足へ運び、ネパール人・ミャンマー人の留学生から聴き取りを行うことで、仮説から課題解決へ向けた中身の部分で前進がありました。ただ、発表後の他班生徒からの質問「増え続ける外国人に対して、今治市は具体的にどんな取り組みを行っているのか?」については答えることができませんでした。というのも、今治市は今年度から市民参画課の中に多文化・共生社会推進室を設け、有識者の懇話会(大成先生が座長)を通じてどんな施策が必要か、アンケート実施・分析を通じて練っている最中だからです。現在、今治市内には4,000人余りの外国人が住んでおり、その多くが地場産業の造船業や繊維産業で働いていて、フィリピン人が一番多いようです。そして、特に外国人が多く住んでいる大西地域や吉海地域では、地区行事などで交流の機会を設け、今年度から試験的に取り組みを開始しました。機会があれば、生徒たちにはそういう現場にも足を運んで取り組みを視察して欲しいと願います。
1班の「世界にしまなみ海道の魅力を伝えるには」は、実際にサイクリングターミナルで外国人のサイクリスト10名から英語でヒアリング調査を実施していました。〝どこから来たか〟〝どのように知ったか〟〝何を目的に来たか〟〝滞在期間はどのくらいか〟など、的確な質問項目を設定できていました。予想通り、今治市での滞在期間(宿泊)が短い課題が浮き彫りとなり、その対策については〝宿泊をともなう2日間にわたるようなサイクリングイベントの開催〟などを提案していました。また、世界からサイクリストをしまなみ海道へ呼び込むための提案として、5班が新たなご当地グルメを誕生させることで、食を通じて今治の文化を世界へ発信したい旨の発表が見られました。1班のアンケートについては、もう少しサンプルが欲しいですね。
3班の「今治と世界を結ぶwith今治タオル」は、大成先生も個人的に興味のあるテーマです。軟水の地域でしか普及しないとされる今治タオルを、硬水の地域で売るにはどうすればいいのかという、世界のマーケットを視野に入れた消費地拡大のアイデアを高校生の視点で見つけ出すというものです。生徒たちが今治タオル工業組合に問い合わせたところ、すでに丸山タオルが「百洗綿花」という硬水地域に対応したタオル商品を開発していることが分かりました。それが他のメーカーに広がらないのは、何か理由があるのか、その辺りの点も調べて欲しいところです。IKEUCHI ORGANICが車椅子テニスプレイヤーの小田凱人選手(世界4大大会でグランドスラムを最年少で達成)に同社製造のタオルを提供していますが、その反響がどうなのかもヒアリング調査して欲しい旨の注文をつけたしだいです。
現在、今治タオル業界は輸入タオルに押されて、再び厳しい局面を迎えているとの指摘もあります。ふるさと納税の返礼品で今治タオルは人気商品ではありますが、その恩恵を地元のタオル業者すべてが享受できているわけではないのです。硬水・軟水という問題を突き抜けた課題解決のアイデアを提案する時期に来ているようにも感じています。1班との兼ね合いでいえば、外国人が多く宿泊する宿泊施設で、今治タオルのPRがうまく取り組めているかというヒアリング調査も行って欲しいものです。
4班の「今治の姉妹都市パナマを知る旅に出よう!」も、アンケート調査を実施し、市民や高校生に認知度がない課題を指摘していました。日本最大の海事都市・今治には、市内にパナマ海事庁「セグマル」が10年前に開所され、これは今治市にパナマ船籍の外航船を所所有する船主が多いことに関係しています(セグマルは、スペイン語で海上安全の意味)。大成先生からは、「どのくらいの隻数あるのか?」「外航船にパナマ船籍の占める比率は?」といったデータ収集を行って欲しいと注文をつけていました。また、今治船主の外航船にパナマ船籍が多い背景に、便宜置籍船のシステム(タックス・ヘイブン)が影響していて、そうした情報をもう少し集めることで、今治市民のパナマシティへの関心が深まるように思います。4班は、最終的にパンフレットを作成し、両市の友好関係の発展につなげたいとのことでした。セグマルでヒアリング調査を行ったことには、大成先生も感心していました。
次回の発表は12月に開催予定で、今回はあまり指摘しませんでしたが、内容に加えてプレゼンの発表態度にも注目したいと思います。グローカル班のみなさん、がんばってください。

