1月13日(土曜)午前中、愛媛県社会福祉士会監事の島崎義弘氏を招いた大学公開講座を開催したところ、本学介護福祉コースの学生15名を含む43名の参加がありました。島崎氏は今治市関前地域(岡村島)の出身で、今治市役所をへて現在は今治市社会福祉協議会関前支部長をされています。演題「安心して楽しく老いる地域づくり」にもある通り、福祉を地域づくりととらえた視点で、学生たちには楽しみながら学べる講座になったように思います。
発表する島崎氏 |
冒頭は、正月に起きた能登半島地震に関連し、災害時に求められる地域福祉のあり方を話題提供されました。大規模な災害が起きた際、まずは被災地のニーズをつかむことが大切で、そのニーズも刻々と状況が変わっていくとのことでした。そのことは、愛媛県で平成30(2018)年7月に起きた西日本豪雨災害の際に得た教訓です。当時の今治市は、島崎氏らを中心に、どの県内自治体よりも早く災害ボランティアセンターセンターを立ち上げました。市内でも、伯方島・大島などで土石流が発生し、数名の死者をだす大惨事となりました。そのとき、被災された住民のニーズ(困りごと)を把握し、生活再建や地域の復興に向けた支援活動を展開していく仕事に島崎氏はかかわりました。こうした災害は、またいつ起きるか分からないことを念頭に入れると、近所づきあいの大切さや災害への備えなど、コミュニティのあり方が問われてくるとのことでした。
講座の様子 |
少子高齢化が進む昨今ですが、平成21(2009)年10月に今治市玉川町鈍川地区にオープンした「ふれあい茶屋」では、買い物や食事サービス、サークル活動など、高齢者自らが地域課題の克服に動き出した事例が紹介されました。今では、老人という言葉をひかえ、ヤングオールドのような呼び方も見られるようになり、元気な高齢者が地域福祉を担う地区も見られるようになっています。また、島しょ部の今治市伯方町北浦地区では、旧北浦保育所の「鎮守の森」を活動拠点に、老若男女だけでなく、フィリピン人などの外国籍住民を巻き込んだ交流活動の事例も見られます。その中心には、住民有志でつくるNPO法人が関係しています。伯方島では、造船・海運業などに従事する外国人のために、ごみステーションの案内板に多言語表示が導入されるなど、多文化共生社会への取り組みが見られるようです。それらは、”0から1を創り出す活動”で、行政の力や制度の狭間を埋める地域福祉活動としてとらえることができるとのことでした。
講演の前半終了前には、ある一人暮らしの女性の仮想事例をとりあげ、彼女に必要なもの・サービスは何か、会場に意見を求めました。この問いかけに学生数名が回答し、その心がけが災害に強い福祉のまちづくりにもつながると励ましの言葉をいただきました。また、地域の新たな支え合いとして、自助・公助以外に〝共助〟の取り組みがとても大切になってきていると話題提供されました。休憩をはさんだ後半は、本学地域連携センター長の大成経凡先生とのトークセッション(両名は東北福祉大学の先輩・後輩)で、共助の歴史的事例を紐解きながら、改めて今後の地域福祉のあり方について参加者と意識を深めました。
意見を発表する学生 |
トークセッション(島崎氏&大成先生) |