2025年2月25日火曜日

近見地区の住民交流会に参加(1月27日)

 今治市近見地区では、「しまなみ海道周辺を守り育てる会」(村越定信会長)というまちづくりグループを中心に、地元の歴史文化遺産を生かしたユニークな活動が展開されています。きっかけは、15年前の平成22(2010)年6月に近見公民館であった同会主催の勉強会でした。その時、講師を務めたのが大成経凡先生で、「まちづくりに生かそう近見地区の歴史文化遺産」のテーマで講演を行っています。講演では、地区内にある県下最大の前方後円墳の相の谷古墳(1号墳)や大浜八幡神社の所蔵絵馬・船模型・板図などの価値を解説しましたが、住民が強い関心を示したのが相の谷古墳でした。まず取り組んだのが遊歩道の整備で、地権者の了解を得て草刈り・雑木刈りを行ったことで、古墳のフォルムがよみがえりました。以後、近見小学校6年生の遠足コースとなり(大成先生がガイド役)、今治市教委の事業で近見中学校生徒がドローンを使った教材動画の制作を昨年実施しました。


相の谷1号墳と近見小遠足(2022年4月撮影) 

 その古墳の麓にある城慶寺そばの丘陵〝小湊城〟は、村上海賊ゆかりの海城跡として、日本遺産にもなりました。遠足コースは、古墳・城跡以外に、海上保安庁施設の来島海峡海上交通センター(来島マーチス)や大浜灯台跡地、伊豫水軍そばの湊石風呂跡や日本遺産の大浜八幡神社に及んでいます。しまなみ海道周辺を守り育てる会が近見小学校と連携し、海上保安庁関係機関や寺社らに協力を呼びかけることで、児童が散策をしながら郷土の歴史文化を学ぶ先進的な取り組みが行えているのです。来島海峡に臨むそのエリアは、海事遺産の宝庫であり、〝日本最大の海事都市〟を標榜する今治市にとっては、地域活性化を考える際に戦略的なテコ入れをしやすい場所ともいえます。相の谷1号墳は、県教委が将来的な国指定史跡候補にランクづけしており、期待はふくらみます。


 今、同会が目標とする課題は、大浜灯台跡地の払い下げを今治市に受けてもらい、その場所を今治市海事都市公園第1号とすることです。灯台跡地は国有財産であるため、不要となれば払い下げが行われます。その際の原則が更地にすることですが、同会は明治30年代に築いた敷地を取り囲む煉瓦壁や基礎石垣を残したままでの払い下げを要望しており、そのためには市の買い取りがベストのようです。購入費用は、同会で捻出することもやぶさかではなく、この活動に大成先生もアドバイザーで関係しています。昨年11月下旬に同会が実施した研修旅行(男木島灯台・屋嶋城跡・四国村視察)は、会員以外の参加も呼びかけましたが、そのことがこの日の交流会につながったようです。


ありし日の大浜灯台(絵葉書より)

大浜灯台跡地(2021年11月撮影)


 交流会には、しまなみ海道周辺を守り育てる会以外に、区長・婦人会・保護司・民生委員・老人会・幼稚園長・児童支援員・保健師・社会福祉士などが集まりました。各種世話役の方が意見交換する中で、地域の課題が見えたように思います。この日は極寒でありましたが、公民館の調理室で地元農家の提供を受けた野菜・米で芋煮をつくり、婦人会が腕をふるいました。そして隣室の研修室で昼食会を兼ねた交流会となり、大浜灯台跡地の払い下げの問題も、地域住民の中で共有されました。コロナ禍以降、調理室の稼働率が下がっていたようですが、今回の交流会のために調理の予行演習も行いました。楽しんで取り組めたことで、互助の力で再び地域を見つめ直すきっかけにもなったようです。


意見交換会(近見公民館) 

本学では令和8年度に「地域未来創生コース」を新設しますが、担い手不足に悩む地域には、調理や介護、まちづくりの現場へ、学生たちをボランティア派遣することが求められます。新コースに関係する大成先生によると、近見地区もその候補地の一つであり、ほかに宮窪地域・関前地域・三津浜地区なども念頭にあるようです。そのことが学生たちにとって将来の糧となり、身近な地域の活動を通じて広い視野の醸成につながれば幸いです。3月23日(日曜)の来学型オープンキャンパスから、本格的に新コースの学生募集を始めたいと思います。


将来ビジョンを述べる大成先生






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