2023年7月12日水曜日

大学公開講座2023  7月8日 今治市の素晴らしい自然環境について

 7月8日に開催された大学公開講座では、今治市環境パートナーシップ会議会長の小澤潤氏を講師に招き、「今治市の素晴らしい自然環境について」のテーマでご講演いただきました。小澤氏は在野の植物学研究者で、20年余り今治市の自然観察会を続け、愛媛県内の環境調査や保全活動にもかかわっております。ちょうど、NHK朝の連ドラ「らんまん」で〝日本の植物学の父〟とも称される牧野富太郎博士をテーマにした番組が話題とあって、それと重ね合わせるように参加者約20名は全国的にも珍しい今治市の植生について聴き入っていました。

ユーモアを交えたトークを披露する小澤氏


 ふだん生活しているとなかなか気づきにくいことですが、小澤氏によると、今治市には瀬戸内海で最も長いと思われる8㎞にわたる砂浜が、西条市の河原津地区から桜井・唐子浜・織田が浜にかけて続いているそうです。その中に希少な海浜植物のハマビシやウンランの群落が確認され、県指定の保護区にもなっています。県内には美しい砂浜は他にもありますが、今治市内の砂浜はその後背に海浜植物や松林などが分布するゾ―ネーション(帯状分布)が形成され、生態系の豊かさを感じることができます。干潟が多いのも特長で、近年、四国で初となる希少なヒロハマナツの群落も見つかったそうです。

 小澤氏が注目しているのが、大三島の台(うてな)海岸に分布するシバナやチャボイなどの希少な塩性湿地植物です。そこは、10センチで植物の階層が変わる珍しい場所(多くは私有地)で、解説板などを設置して保護活動を行っているそうです。知らないことで開発が行われ、失われるケースがあるからです。以前、世界的建築家の伊東豊雄氏が「美しい大三島をつくろう車座トーク」を大三島で開催した際、小澤氏は〝何か新しいものを生み出すことも大切〟だが、〝すでに存在する大三島の豊かな生態系を知り、守り続ける大切さ〟を提言したところ、伊東氏が大いに感銘を受けたそうです。

講座の様子

 平成26(2014)年に、今治市が総合計画策定でアンケートを実施したところ、「自然を生かしたまちづくり」を希望する市民が最も多かったようです。現在、今治市は「住みたい田舎ベストランキング」(宝島社)の最新版で総合1位を獲得するなど、移住者にとって望まし条件がそろっており、その一つに豊かな自然環境があるとのことでした。今治城の内堀一つとってみても、史跡の価値だけでなく、希少な生物や植物の宝庫にもなっていて、豊かな自然が残されているということは、人間にとっても住みやすい環境であることを誇りに感じて欲しいとのことでした。

 小澤氏の今後の目標としましては、青少年と行政を巻き込みながら自然環境の普及啓発活動を行い、その豊かな生態系を守り育てていきたいとのことです。その活動に、本学の学生もかかわって欲しいとのことでした。当日の講座の模様は、後日の今治CATVにて放送予定です。




このページの先頭へ戻る