2025年12月19日金曜日

授業紹介「日本を学ぶⅡ」 伊予桜井漆器会館へゆく(12月12日)

  12月12日(金)の「日本を学ぶⅡ」(大成経凡先生)は、今治市桜井地区の名所をめぐりながら、今治市の伝統工芸や自然景観を通じて日本を学ぶことにしました。ネパール留学生を中心とする午前の部は、33名をともなって国指定名勝の志島ヶ原・伊予桜井漆器会館・桜井総合公園・国民休暇村瀬戸内東予ビーチを訪ねました。ミャンマー留学生を中心とする午後の部は、48名をともなって伊予桜井漆器会館・桜井総合公園・志島ヶ原を訪ねました。コース地や順序が違うのは、伊予桜井漆器会館の営業時間と参加人数などが影響しています。この日は、とにかく冷たい強風で凍えました。桜井海岸や休暇村ビーチに打ち寄せる波は、瀬戸内海の穏やかさにはほど遠い、太平洋のうねりを感じさせるものでした。ある留学生は、コースセミナーで訪ねた高知桂浜を想い出したようです。


志島ヶ原の松林

白砂青松の志島ヶ原の中心部に綱敷天満神社がありますが、その辺りは松が防風林となってとても静かでした。参拝を終えて海に近づくにつれ、工事現場のような奇妙な音が耳に響くので不思議に感じたところ、それは波音でした。神社では、二礼二拍手一礼の神道の作法を伝え、実践してもらいました。同社が〝学問の神様〟で知られる菅原道真を祭神としていることに触れ、合格祈願の絵馬掛けに注目!学生代表2名(ミャンマー)には、実際に絵馬へ願い事を書いてもらいました。やはり、日本語能力試験の合格を書きましたね(笑)。ネパール留学生は、牛のモニュメントに関心が向けられていました。


合格祈願の絵馬

伊予桜井漆器会館では、陳列されている商品が、学生たちの目には美術コレクションとして映ったことでしょう。とても高価ですが、鳥井社長によれば他産地に比べるととてもリーズナブルな価格となっていて、県外客が驚いて買っていくようです。今治市民は高価なイメージを持ちすぎて、あまりお店に足を運んでくれないことを嘆いていました。高価な点には理由があり、木地を加工し、研磨し、下地を塗って、上塗りをして、蒔絵を描く。そうした工程を知れば、高価な理由がわかります。この点については事前学習で伝えていました。まずは認知することが大切なので、留学生にはお店の許可を得て、実際に商品を触らせていただいたりもしました。漆の英語表記は小文字のjapanです。日本的、日本らしさの象徴ともいえます。塗り箸を買い求める留学生もいました。


伊予桜井漆器会館


漆はjpanです!

現在、桜井地区で製造と販売の両方を手がける業者は伊予桜井漆器会館だけとなってしまいました。一方で、桜井地区には漆器の製造販売で栄えた町並みも少し残されています。かつて全国有数の漆器問屋で知られた小谷屋松木家の旧店舗周辺(栄町)がその一例といえます。もう小谷屋は廃業してから年月がたちますが、その明治期竣工の旧店舗を地域活性化に役立てて欲しいと、このほど所有者から大成先生に相談(依頼)がありました。2026年春新設の「地域未来創生コース」の実践の場となりそうです。大成先生としては、そこを〝伊予桜井漆器資料館〟にしたいようで、同家が所有する江戸後期以降の漆器行商(椀舟行商)に関する資料を生かしながら、学生の協力を借りたいとしています。会館と資料館が両輪となって、地元の伝統工芸を未来に伝える活動を展開したいとか。同コースは、今治市の地域課題と向き合い、その解決に向けた活動を通じて学生に社会性や広い視野を身につけてもらおうと考えております。1期生につきましては、現在募集中です。


さて、桜井総合公園につきましては、海を展望する抜群のロケーションのもと、学生にはソリを楽しんでもらいました。極寒の中、何度も傾斜地を往復することで暖まってもらいました。当日の気象状況から、大成先生が機転を生かし、同所をコースに組み入れました。寒いことで消極的な行動にでるかと思いましたが、意外に反響が大きく、やはりそこは若者です。楽しむ姿を見て微笑ましく感じました。今治市民の間でも、その人工芝ソリすべり場はあまり知られていない穴場です。瀬戸内海の景観をうまく取り込んだ遊戯場といえます。留学生たちには、ちょうどいい気分転換になったことでしょう。時に楽しく、日本を学んでもらえたらと思います。

桜井総合公園でソリ滑り


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