12月8日(月曜)午後、観光庁の地域観光魅力向上事業の一環で、今治市大島にある山中造船(株)本社工場をFC今治高校里山校の1・2年生30名が見学しました。本事業は、観光庁の補助事業で催行されたもので、(株)しまなみが主催し、本学はこれに協力するというスタンスをとり、来春から地域未来創生コースを担当する大成経凡先生が同行しました。具体的には、今治市の海事産業文化にスポットを当て、中高校生対象の修学旅行の観光商品を提案するというものです。里山校の生徒たちの多くが県外出身者ということで、今治明徳学園の高大連携も兼ねて、モニターには最適と判断しました。
現在、すでに県外の中学・高校を対象にした修学旅行生が、しななみ海道沿線の島々などにやって来ています。果物狩りやサイクリングといったグリーンツーリズムを体験していますが、そこに〝日本最大の海事都市〟のコンテンツを生かしたツアー商品を加えようという企画です。今治市内の児童・生徒の多くは、授業の一環で造船所の進水式を一度は見学したことがあります。とても華やかで造船業の魅力の一端を知ることができます。本学では、それだけでは不十分との認識から、ふだんのものづくりの現場を見せようと、今治造船(株)にお願いして、毎年「地域活性化論」の授業の中で工場見学を行っております。
今回のツアー商品も、ふだんのものづくりの現場を知り、将来の進路選択の一つに今治市の海事産業を加えて欲しいという願いが込められています(滞在型観光への経済効果も期待)。認知するところから進路選択は始まるため、知ってもらう機会をツアー商品に盛り込みました。ただ、安全基準や受け入れキャパなど、色々と熟慮を重ねた結果、内航船の建造量で日本一を誇る山中造船(株)の本社工場が最適候補地となり、同社のご理解もあって見学が実現しました。同社は9月末にも「第1回海と船の甲子園」(今治市主催)の会場の一つにもなり、ドライドックでクイズ大会が催され、県内外から集まった造船系工業高校の生徒たちの学びの場ともなりました(大成先生がクイズの出題者)。
今回も、その時と同様に同社視聴覚室で会社案内のVTRを視聴してから、浅海社長のガイドで工場内の施設を巡りました。同社は〝エラ船型〟という省エネ船型の特許を持っていますが、その技術の背景にある鉄板を熱と冷却とで曲げる撓鉄(ぎょうてつ)の様子も観察することができました。溶接などの作業音で説明が聞き取りにくいことにも配慮し、インカムを参加者全員に携帯させていただいたのは画期的と感じました。ドライドックの底(床)にも降り立ち、建造中の鉄鋼船を間近で見られたのは感動的でした。艤装(ぎそう)岸壁に係留された一般貨物船が2隻ありましたが、同社ではタンカー・フェリー・コンテナ船など様々な種類の船の建造に対応できるのが強みとのことで、2014年に波止浜湾から現地へ工場移転したことで、作業効率や建造能力に飛躍が見られたとのことです。
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| ドックゲートと艤装岸壁(奥) |
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| ドライドック(右は建造中の鉄鋼船) |
作業服を着た若い女性職員の方が工場内見学に随行していたので、どういうお立場かうかがうと「私は設計部門で働いています」とのことでした。女性にも、技能を生かして活躍できる職場環境と感じました。見学を終えると視聴覚室に戻り、質問タイムとなりました。3名の生徒が質問しましたが、一人は船主のご子息で、「近年、船価が10年前の2倍くらいに高騰していると父から聞いたが、それは本当か?」と、浅海社長に訊ねていました。鉄材の高騰が影響しているようで、その点では高騰する前に現地へ工場移転したことが正解だったと、世界的なマーケットの中に造船業界があることをしみじみ語ってくれました。
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| 質問する生徒 |
山中造船(株)を後にすると、海岸回りのルートで〝あいえす造船(株)本社工場〟を車窓から眺めつつ、「ここで東予港~大阪南港を航行するオレンジフェリーが建造されたんだよ!」と大成先生が解説しながら下田水(しただみ)港へ向かいました。今度は、遊覧船に乗って来島海峡の潮流や橋の景観などを楽しみました。途中、海峡を航行する船の航跡を横切る際、波揺れがアトラクションのように感じられ、生徒たちに好評でした。見せ場は波止浜湾の造船所群で、ブロック建造法でつくる大型船の断面の様子を、遊覧船から間近で観察することができました。今治造船(株)今治工場の艤装岸壁に係留された全長170~190mほどの大型船も、船尾の下まで接近し、スクリュープロペラの黄金の輝きを観察することもできました。何から何までが非日常的でしたが、生徒たちには貴重な経験となったようで、海事産業への関心も深まった様子でした。
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| 来島海峡で通航船舶に接近 |
来春開設の地域未来創生コースでは、産業観光も学びの一つとしてとらえており、今回のモニターツアーの経験を授業に生かしたいと思います。






