2024年12月5日木曜日

中心市街地まちづくり市民会議に参加して(11月30日)

 11月30日(土曜)に今治地域地場産業振興センターで開催された「中心市街地まちづくり市民会議」に参加しました。今治明徳学園からは、前半のまちづくりに関する発表にFC今治高校里山校(FCI)1年生2名の出演があり、後半のパネルディスカッションでは本学地域連携センター長の大成経凡先生がパネラーとして登壇しました。

 現在、今治市では中心市街地の魅力向上に向けて「今治市中心市街地グランドデザイン(まちづくり基本計画)」の策定を進めています。そのデザイン部会の委員の一人が大成先生です。この会議では、中心市街地の現状と課題、まちづくりの方針、将来のビジョンについて、多様な参加者と意見交換を行って、市民が一体となる「中心市街地まちづくり」を推進するねらいがあります。当日は市民130名の参加があり、まちなかの賑わい創出への関心の高さがうかがえました。

 プログラム冒頭で徳永市長が中心市街地再生に向けた意気込みを語り、つづいて高校生・大学生・まちづくりプレイヤーによる事例発表がありました。トップバッターは今治東中等教育学校のSFK(Sea & Forest Keepers)の男子生徒2名が、環境にやさしいまちづくりの取り組みとして、今治城内堀と今治港内港を結ぶ水路(潮流)を活用した小水力発電事業の発表がありました。二番手はFCIの生徒で、商店街を拠点にした若者の居場所づくりや外国人にやさしいまちにつなげようと国際交流運動会(本学留学生5名参加)を実施した事例発表がありました。三番手は愛媛大学社会共創学部の羽鳥ゼミの学生3名(1名は今治市出身)で、路上観察で見つけたまちなかのディープな魅力の発表がありました(漁師町の美保地区の護岸景観の魅力やまちなかに喫茶店が多いことなど)。


SFKの発表


FCIの発表

愛媛大学羽鳥ゼミの発表

 近年、県内の高校では探究授業への取り組みが盛んで、地域課題に関心を持って、その解決に地域とともに取り組む事例をよく見かけます。その実践の場をまちなかに選ぶ若者が増えれば、これから描くグランドデザインに若者目線のアイデアが加わることでしょう。本学でも、令和8年度から新コース「地域未来創生」(現在準備中)を開講予定ですが、地域探究の科目の中に〝まちなか再生〟へのミッションも取り入れたいと思います。これは今治市の中心市街地だけでなく、大成先生が次年度からかかわる予定の三津浜の町並みも視野に入れております。


 まちづくりプレイヤーの発表は、せとうちみなとマルシェの運営にかかわるGTO代表の大木鉄兵氏、まちなかの空き店舗や丹下建築を活用して芸術文化の発信と交流人口の増加を推進する今治ホホホ座の豊島吾一氏が登壇しました。両氏の発表を聞いて感じたことは、魅力的で居心地のいい場所があれば人は集まってくるということです。しまなみ海道の開通による交通体系の変化で航路が激減し、郊外型スーパーも増えて商店街には空き店舗が増えました。港町や中心市街地の活気が失われたのは事実ですが、人を呼び込んで賑わいを創出するためには何を生かし、何を新たに生み出せばいいのか、これからじっくりとアイデアを出し合う必要があります。


そして、本日一番の目玉であるグランドデザインの概要版(素案)が、上條・福島都市設計事務所の福島秀哉氏から示されました。「あくまでこれは叩き台であって、この通りにしなければならないというものではない」と前置きしたうえで、交通量の減った36m幅の広小路(今治駅~今治港)にグリーン・アベニューをつくる案や市・県・国の庁舎建て替えにともなう複合庁舎を県今治地方局・河野美術館のあたりに設け、丹下建築の市庁舎は博物館、市庁舎駐車場は市民広場とするなど、大胆かつ魅力的な提案がなされました。


披露されたグランドデザイン(素案)


休憩をはさんで後半となりますが、「ストリートからの都市再生」と題し、中央大学の三浦詩乃准教授が公共空間のデザイン・マネジメントの観点から基調講演を行いました。まちなかにサイクリングロードやウォーカブル(歩きたくなる)なストリートが普及しているヨーロッパの事例をいくつか紹介し、聞いていて〝やさしさのモビリティ〟という価値観が今後の今治市に求められるように感じました。まちなかで、車が時速30㎞で走るようになれば、そこは住む側にとっても生活の質が高くなるようです。


つづくパネルディスカッションの中で、大成先生は今治市に広小路が誕生した歴史背景を解説しました。藤堂高虎が築いた城下町は海岸線に平行な町割りで、目抜き通りは辰の口門(現、辰の口公園)からのびる幅員約4.5mの本町通りでした。近代都市計画で生まれた幅員18mの広小路は、これを直行するインパクトのあるもので、一部市民の了解が得られず立ち退き問題で揉めたりもしました。戦災復興都市計画では、広小路をさらに拡幅して現在の36mとし、ここに市民の寄付でクスノキの街路樹が植えられました。丹下健三は、その景観を生かしながら、市庁舎・公会堂・市民会館などを設計しています。先人たちが築きあげたレガシーを生かし、未来の都市づくりを考えていく必要があるとのことでした。

まさにグランドデザインを描くためのキックオフミーティングとなった会議ですが、地域未来創生コースもこの問題と向き合って参りたいと思います。



パネルディスカッション




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